翻訳-CPO 出身のTim CookがApple社CEOになるために採った戦略(1)

Andrew Bartolini のブログ “CPO rising”で、8月~9月にApple社のCEO Tim Cook氏について、購買/サプライチェーン領域の経歴をもち、Compaq社のCPOから、Apple社のCEOになった人物として、幾つかの記事が掲載されました。その中で、Apple社のサプライチェーン改革についてサマリーした” The Strategies that Propelled Tim Cook from CPO to CEO”について訳出してみました。
なお、原本については、以下を参照ください。

  • The Strategies that Propelled Tim Cook from CPO to CEO Part1(http://cporising.com/2012/09/19/the-strategies-that-propelled-tim-cook-from-cpo-to-ceo-1/
  • The Strategies that Propelled Tim Cook from CPO to CEO Part2 (http://cporising.com/2012/09/21/the-strategies-that-propelled-tim-cook-from-cpo-to-ceo-2/ )===(以降、翻訳)===
    (Part1)
    私(Andrew Bartolini)は、Tim Cookのストーリー(そのいくつかは、8月に発見したものだ)にワクワクし、魅せられている。 Cookは、なんといっても、CPO(Chief Procurement Officer)から世界最大で、最も成功している企業であるApple社のCEOになったのだ。私の記事へのアクセス数から、私はこの興奮を読者の多くと共有できていると考えている。先週、私たちはTim Cookの考えや発言を共有することにより、彼のキャリアに関する考え方、キャリア戦略の概要に光を当ててきた。

    今回と次回はCookがアップルで採用し、彼がSteve Jobsに重用される契機となった重要なアクションを見ていくことにしよう。

    なお、以下はApple社とTim Cookについて記述した最近の記事の一覧である

  • Think Different.(http://cporising.com/2012/08/13/think-different/
  • Vision + Execution: Steve Jobs Understood Procurement’s Importance to Apple’s Success(http://cporising.com/2012/08/15/vision-execution-steve-jobs-understood-procurements-importance-to-apples-success/
  • From CPO to CEO: How the CEO of the World’s Largest Company (Apple) Used His Procurement Background to Thrive(http://cporising.com/2012/08/17/from-cpo-to-ceo-how-the-ceo-of-apple-used-his-procurement-background/
  • From CPO to CEO: Cook’s Words Part 1(http://cporising.com/2012/09/12/from-cpo-to-ceo-a-career-path-in-tim-cooks-own-words-1/
  • From CPO to CEO: Cook’s Words Part 2(http://cporising.com/2012/09/14/from-cpo-to-ceo-a-career-path-in-tim-cooks-own-words-2/Steve Jobsが、Apple社の購買およびサプライチェーン業務を一新するために、Cookを雇ったことを思い出そう。Cookは2011年にCEOになったときに、Apple社のサプライチェーンは世界中に一元的に張り巡らされたものになっていた。以下は、そのためにCookがApple社で実施したいくつかのキーとなる戦略や施策、およびそれに関するCook、著者、もしくは他の誰かによって付された補足事項の羅列である。

  • 当初(1998年)から、Apple社は製造業務から離れるべきとCookは確信していた。そこで彼は、即座に多くのアジアを基盤とする製造委託企業(contract manufacturers)(“CMs”)との連携した製造方式を機能させ始めた。
  • Cookの主要戦略の1つは生産委託であったが、その実現には期間が必要だった。そこでCMとの生産委託を進めると共に、Apple社の既存の生産・購買・サプライチェーン業務の整流化を進めた。
  • CookはApple社のコンピュータ製造リードタイムを半減した。
  • Cookは戦略的サプライヤーの75%を削減した
  • 絞り込んだサプライヤーに支出を集約することにより、Cookは積極的なディスカウントや他の条件交渉ができるようになった。2週間分の在庫をサプライヤーは保有すること、Apple社の工場の1マイル以内に在庫すること、支払サイトを90日にすることなどである。
  • Cookは、Apple社の在庫拠点を19から10に削減した
  • Cookは、就任後3半期でApple社の在庫を8割削減した。
  • その後もApple社の在庫削減を続け、2年以内に2日分の生産量にまで削減した
  • Cookは在庫は「悪」であると確信し、「在庫は日次に把握するものであり、日々在庫量が更新されていなければ問題だ」と考えていた
  • Cookの最初の戦略から得られたコスト削減と効率向上は、Apple社の運転資金とバランスシートに巨額な好影響を及ぼした
  • バランスシートは、広範囲な売上改善にも支えられて、サプライヤー対応の余力をもたらした。バランスシートの力と大量の購入量は、以下の観点から、Apple社(とCook)が安定供給、品質、低価格を享受することを可能にした。
    • 高スペックに対する「支払能力」 – MacBookへのレーザー刻印
    • サプライヤーの生産能力の「一括買い付け」 – 東芝製のiPod用ディスクドライブなど
    • 特定品目での市場支配 – iPod Nano発売前のフラッシュメモリ、ここ数年に何度かあったiPhoneの画面パネルなど
    • 購入品目(もしくは構成部品)の発注に対する前払い
    • 生産設備の購入とサプライヤーへのリース貸与
  • 多くの点において、Tim CookはSteve Jobsとまったく異なるリーダー/人物である – Jobsの創造的(で不安定な)天才性の対局にある人物に思える。Cookは非常に分析的な人物に思える
  • しかし一方で、二人は脅迫的、猛烈さ、過酷に要求するマネジメントスタイルを共有している
  • Cookの1日は朝4:30に始まり、「最初にオフィスに入り、最期に出る」という教えを実践している
  • 何年もの間、Cookは日曜の夜の電話スタッフ会議を続けており、そこで翌週の準備を行う
  • ミーティングでのCookの態度は猛烈であるが、人や発言を馬鹿にしたりはしないApple社のサプライチェーンは、小売アウトレットの設立などを含めて、過去14年間で劇的に変貌した。Part2では、Tim Cookがこの期間に成し遂げたことを振り返っていこう。最期に、アップルの購買力の協力な一例を以下の 2012年3月のニュースレポートをもって示しておくとしよう。
    ソウル:Apple社はライバルである韓国のサムソン電子からのメモリーチップ調達を日本のエルピーダに切り替えるとの見込みに基づき、サムソン電子の株価は木曜日に大幅下落した。サムソン電子の株価は、朝方は直近2ヶ月の最低値まで落ち込み、Apple社がDRAMの新規の大量発注を再建中のエルピーダに行ったと報じられた水曜日以降、100億ドルが消えた。」
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