Purchasing Must Become Supply Management (7)

情報システムによる支援

戦略的購買管理を推進するには不完全もしくは不十分な事業計画や事業目的情報しか、購買部門が入手できていない場合があまりにも多い。購買部門担当のエグゼクティブは、主要業容拡大や投資プロジェクト、さらには月次の生産予定などは伝達しているのが常である。しかし、購買部門が価格交渉、納入予定の変更、定期的な需要変動に対応した新材料在庫量の調整を行うに不可欠なのは、短中期の需要変動のような直近3~6か月の業務情報なのだが、これらが十分に伝わっていない場合がある。
これらのデータが無いと、供給ボトルネック、短期需要変動、突発的な購入判断の発生が回避し難い。その結果、時間と金銭にかかわる巨額なコスト、契約違反でのペナルティ、過剰在庫、バイヤーがトラブルシューティングに費やす購買活動の無駄が発生してしまう。
多数の製品、複数の工場、(消費財や製薬業のような)在庫販売を行っている複雑な企業は、単一製品ライン、および/もしくは、製造設備メーカーのような受注生産企業よりも脆弱である。しかしどちらの場合でも、専用の情報システムの支援が必要になる。
その支援内容には、以下が含まれる。

□3~6か月の予測期間を移行(ローリング)し、供給市場データを体系的に評価して需要予測を行うシステムを使った業務の柔軟性の改善

□EDP支援型購入計画立案、情報活用、意思決定支援システム利用による業務効率改善、投入時間短縮、コストと手作業でのペーパーワーク削減

□資金計画、および/もしくは主要サプライヤーの計画や予測システムなどの他のシステムと連動した統合購買システム。この最もわかりやすい例は、いわゆるカンバンシステムである。これを使って、日本の自動車メーカーの日産自動車は仕掛品在庫をゼロ化している。そして最近は、欧米自動車メーカーも同じ方向に動いている。

□品目コモディティ分析や価値分析のような実績がある購買分析アプローチの導入。これがあれば、非ストラテジック品目でのアクションプランを、供給の複雑性やリスクを削減しながら立案でき、15%までの削減案を導き出すことができるようになる。
優れたシステム支援があれば、バイヤーと管理者は日々の問題から解放され、長期の分析作業や計画立案に向かうことができるようになる。加えて、価格低減や支出抑制、在庫削減、事務作業削減、納期やサービス改善の効果も享受できるようになる。
企業はシステムを効果的に活用するだけで、これらの効果を実現することができるようになる。そのためには、部門横断情報や需要情報が一元的にシステムに蓄積され、ライン管理者が必要な情報を購買情報システムから入手できるようにしなければならない(この方式に対するライン管理者の感情的な抵抗感を削減する1つの方法は多くの“新しい”データがシステム内に存在し、欲しい様式に加工するだけで使えるようになることを示すことだ)。このようにすれば、管理者は新システムがユーザーの使い勝手が良いことを確信するに違いない。

スタッフとスキル要件

新しい購買戦略立案の要請に対応するには、購買スタッフのスキルと経験の高度化が必須である。ある国際的な大企業では、広範囲な国際業務経験を有する実力者の営業幹部が購買の長に就任することで購買部門の大幅な地位向上を実現した。他社では、サプライヤー選定判断に関する設計部門の介入を緩めるために、プロセス制御機器メーカーから利用技術エンジニアリングのエキスパートを雇い入れ、購買部門の担当とした。その結果、標準化を進め、プロセス制御機器の代替ソーシング先開拓して、大きな削減を達成した。
なお、優れた購買スタッフとスキルを獲得できる可能性があったとしても、特にサプライヤーとの密接な関係への妨げが生じる場合には、早急な実施は逆効果になる。このような場合には、トップマネジメントは、急激なスタッフ変更を行う前に、購買スタッフ間の建設的な雰囲気や態度を醸成しておくことが必要になる。

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