Purchasing Must Become Supply Management (6)

米国のある電子機器メーカーは、鋳造品を重要ストラテジック品目に分類し、自社の年間購入量および鋳造品のタイプ別の調達複雑性の2つの観点から自社要求を体系的に分析した。この企業は、代替シナリオを比較しつつ、鋳物工場を1つ1つについて、サプライヤー候補とした場合の能力がどうかの評価をし、判断していった。このようにしてできた社外サプライヤーの新しい組み合わせは、5~15%の支出削減を生み出し、コスト競争力を大幅に改善した。
ある多国籍化学メーカーは、現行の原料供給源に関するリスクを削減するために、購買戦略と組織体制を全面修正した。この企業は、5,000種の現行購入品目のうちの75品目をストラテジックもしくはボトルネック品目と定義した。そして詳細な需要と供給の分析を行い、購入数量を最適化して対応した結果、この企業は多くの材料購入に強い立場で臨むという優位性を実現できた。

次に、この企業は炭化水素で実施していた購買方式を石油・石炭材料購買にまで拡大した。中欧、アフリカ、北海、北米、南米の各メーカーへの発注バランスを考え、スポット購買比率を改善し、購買・製造・開発などの上流社内部門の統合化を図って内外製比率を最適化し、材料購入を子会社へとさらに集中させた。さらに企業全体レベルのレビュー制度を確立し、組織体制の変更と情報システムの導入を行った結果、魅力的な代替案や代替機会が明確に判るようになり、その検討を迅速に開始できるようになった。
ある欧州重工業メーカーは、高精密部品を自社内製する際の労働コストおよび管理コストの高騰に直面し、内外製戦略の見直しを決断した。供給市場の分析を行うと、専用NC制御機器を使用し始めたばかりの小規模精密部品メーカーを複数社発見できた。管理費の低さと特殊生産に特化した規模の経済ゆえに、これらの企業は自社内製よりも価格が安かった。そのため、これらの企業からの10~20%安い価格での購入に切り替えた。さらにこの成果がこの企業が部品製造から部品販売へと事業転換することの要因となった。

組織を強化する

他の業務機能と何の関連も持たずに購買業務を進めていける企業は、いまやほとんどない。より大きな範囲の統合化、部門横断関係の強化、トップマネジメントの関与強化の全てが不可欠である。購買組織も、情報システムの支援からトップマネジメントの姿勢などを通じて、この不可欠要素に対応していかねばならない。そして、その変化の際に必要となるのが、組織間の効果的な関係確立、十分なシステム支援、新たなスタッフおよびスキル要件への対応の3つである。

効果的な他部門との関係

企業が最大限の購買パワーおよびバーゲニングパワーを発揮するためには、企業の事情に即した購買活動が行われる必要がある。特に、トップマネジメントは集中購買対象と分散購買対象の区分について意思決定を下さなければならない。

しかし、集中・分散のこの問題は単純には解決できるものではない。集中化は企業の購買力を強化する一方で、柔軟な対応力を失わせる。集中と分散の適正な釣合を見つけるためには、購買力と柔軟性のトレードオフを慎重に検討しなければならない。例えば、ある多国籍多事業企業では基礎原料の集中購買を実現する一方、技術特有性のある購買品は集中化できないことを発見した。製造設備要件、品質基準、必要なサービスおよび部材品目が企業内で一元化できなかったからである。
もう1つの重要な問題は、購買部門の社内での位置づけである。企業は購買部門を製造機能として扱うべきだろうか、それとも事業部門の一部とすべきだろうか。マネジメントは、購買部門を集中独立部門とすべきなのか、部課レベルなのか、材料管理部門もしくは供給部門の一部とすべきなのかを判断しなければならないが、これは購入量と購入品の集約度、および企業構造とその複雑さにより決まるものである。
ただし、各企業の企業理念は同一でないため、採用する解決策も同一にはならない。例えば、ある国際化学企業では原材料や燃料全ての全世界での購入に責任をもつ集中購買グループを結成したが、その競争相手は完全な分散化を図り、各部門に個別の購買グループを持たせた。これは非常に対極的なやり方であるが、どちらもが導入企業の状況に対応し、十分に機能したのである。
さらに、購買部門の構造は購入品市場の状況を反映した構成となり、そこには各品目戦略の実施を主導できる能力がある購買スタッフがいることも重要である。そして管理者に対しては、自社の枠組みの中で、柔軟なやり方を執りつつ、企業家精神を発揮してくれることを奨励すべきである。

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