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サプライチェーン全体を情報連携できれば、自動車メーカーの収益は5割増になるはずだ-マッキンゼー (2021-07-15)

コロナ禍で、さらには最近はサプライチェーン脱炭素化で、サプライチェーン全体を連結管理する必要がますます大きくなってきています。では、サプライチェーンの連結管理不全は、どのくらいの損失を生み出しているのか、なぜ連結管理ができないのか、どのようにすればよいのかを、最もサプライチェーンが広範で深い自動車業界を例に記述した論考「Overcoming barriers to multitier supplier collaboration(複数階層にわたるサプライヤー連携を行う上の障害を克服するには)」を7月7日に発表しました。

論考では、製品価値全体の80%をサプライヤーが担う自動車業界では、サプライチェーン全体連結ができていないことで年間4.8兆円~8.5兆円(370億ユーロ~650億ユーロ)の利益損失が生じており、自動車業界の通常利益マージンが5~7%であることから、この損失がなくなれば利益がさらに5割押し上がる、大きな効果があることが示されます。

特に大きな効果が生じるのは、サプライヤーの生産効率向上とサプライチェーン上の在庫削減であり、十分な情報連携ができず、見込みのムダが大きく発生しているとしています(図1で詳細に図示)。

ではなぜサプライチェーン全体連結はできないのでしょうか。3つの障害事項(原因)が指摘されます。すなわち技術(EDIのような2社間限定ではなく、複数での共有技術が未成熟)、業務方式(業務を実施する上での標準規格が未整備)、信頼関係の不備です。

そして今後考えていくべき解決策として、以下が提言されます。
・サプライチェーン関与者全員で利用できる情報共有基盤の整備・確立(現在、技術的には実現しつつある)
・情報共有基盤の運用ルールの確立、特に安全にデータを活用できるガバナンスルール/データ共有基準など(基盤があってもルールなしでは運用できない)
・データ活用ツールの整備
・データの機密性基準やその気密運用方式など

そして実施上のコツとして、次が示されています。
・重要なものから取り組む(代表的なサプライヤーの重要品目から手掛ける)
・現在の最大の問題点を、データ活用でどう解決できるかをサプライヤーと検討する
・どのデータをどう使うのか(どう分析するのか)、そのためにどのような周期で提供しあい、かつそのセキュリティはどうするのかを定義する
・他のサプライヤーを巻き込むことを想定し、十分な汎用性を確保しておく
・情報基盤の運用方式や運用担当者を決め、どう管理運用(ガバナンスするか)を定義しておく

具体的な共有イメージの図2もあり、目を通しておくに足りる内容に思われます。