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国境を挟むグローバル・サプライチェーンへの危惧が様々に報道される、雰囲気として自前主義が台頭-Wall Street Journal (2020-06-02)

5月25日にウォールストリートジャーナル(WSJ)が「貿易の急激な減少が国境を挟むサプライチェーンの欠陥を示している(Steep Drop in Trade Flows Shows Pitfalls of Cross-Border Supply Chains)」というタイトルの記事を掲載しました。

CPBオランダ経済政策分析局の調査結果によると、国境を超える商流は3月に1.4%、第1四半期では2.5%減少し、4~5月はさらなる落ち込みを予想しているとのこと。リーマンショック以来の落ち込み幅になるとのことです。そしてWSJは「個々の国がグローバル・サプライチェーン内でいかに相互依存しているかが、コロナ禍が明らかにしてしまった、特に製造拠点としての中国への依存度を」としています。加えて、わずかな点数の部品でフランスを唯一の供給国にしていたゆえに、他の多くは複数国調達(中国とイタリアなど)方針を取っていたスカニアが生産停止した事例も紹介します。

そしてパンデミックに加えて米中貿易摩擦の長期化見込から、企業には中国を供給先とすることの再検討が迫られているとしています。

国家政策面では、英国のProject Defendや日本の補助金での脱中国政策が紹介されるとともに、新供給先になろうとする東欧諸国などの動向も紹介されます。また、米国もサプライチェーン国内回帰への積極化(補助金支給)などを表明しています。

一方で米国制裁に対し、ファーウェイが半導体の中国国産化を進めていることに触れています(先日、日本経済新聞もスマホの部品の4割を国産化と報じました)。

韓国でも、日本の輸出優遇廃止に対応して管理・確保する「対日重要100品目」を定め、国産化(日本企業の韓国生産進出を含む)や他国調達などの進めていましたが、さらに進めて「対世界338品目」に管理品目を拡大することが報じらました。

このような自前主義の台頭とともに、LCCなど最安値最適国を組み合わせて築いてきたグローバルサプライチェーン(それゆえに発展途上国からの搾取などのCSR問題も生んできた)に対する逆風が、ある意味感情的にも噴出してきているように思われます。

参考)
貿易の急激な減少が国境を挟むサプライチェーンの欠陥を示している(Steep Drop in Trade Flows Shows Pitfalls of Cross-Border Supply Chains)-Wall Street Journal(2020年5月25日)
https://www.wsj.com/articles/steep-drop-in-trade-flows-shows-pitfalls-of-cross-border-supply-chains-11590416983
(下記でも、上記記事を引用)
https://ih.advfn.com/stock-market/stock-news/82526292/steep-drop-in-trade-flows-shows-pitfalls-of-cross

Project Defend: UK PM Johnson orders for plans to end reliance on Chinese imports: The Times-Reuter (2020年5月22日)
https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-britain-china/uk-pm-johnson-orders-for-plans-to-end-reliance-on-chinese-imports-the-times-idUSKBN22X2WA

ファーウェイのスマホ、中国部品4割超に 米制裁1年-日本経済新聞 (2020年5月14日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59096960U0A510C2FFJ000/

サプライチェーン崩壊を想定、韓国政府が「対日重要100品目」を「対世界338品目」に拡大-朝鮮日報(2020年5月12日)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200512-00080007-chosun-kr