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コロナウイルスは、サプライチェーン管理の目覚ましコールだーHarvard Business Review (2020-03-31)

MIT、マッキンゼーと前の投稿で紹介しましたが、サプライチェーン管理では大御所のアリゾナ州立大学からの論考が、3月27日に発表されました。

この論考でまず紹介するのは、新コロナ危機前にTier-2より先のサプライヤーの明確化(マッピング)を実施していた企業の対応状況です。数分で供給経路を辿れ、どのサプライヤー、拠点、部品、製品がリスクにさらされているかを正確に把握しているため、自社を最優先して代替拠点の在庫と生産能力を確保することができていることを指摘します。

しかし多くの米国企業はそれには程遠く、Resilincの調査(1月下旬~2月上旬)では、回答300社のうち70%が手作業で調査中の状況にあったとしています。”やるべし”の理論と現実は異なり、調査に要する労力と時間が膨大(東日本大震災時に日本の半導体メーカーはTier-nサプライヤー調査に100人が1年以上かかったとの話を例に挙げています)ゆえに、属人的な断片知識に頼るしかなく、組織知として共有化できていない現状が示されます。

第2の原因としては、購買部門の評価がコスト削減主体であり、供給保証の貢献では評価されないことをあげています。要するに、実施の動機が生じないのです。納期に間に合わせるための努力正当に評価されず、船便を航空便に変更するなどの損失も明確に他部門と共有して、課題化できていない現状を指摘しています。

最初の原因の解決策としては、サプライチェーンの情報提供会社(Elementum, Llamasoft, Resilincなど)の活用も1つの策としています。

第2の原因の解決には、購買、物流、サプライチェーン、財務などの部門横断の会議体を設けて、より総合的な視点で貢献を明確化し、購買部門が対応行動を起こす動機を作らないとうまくいかないとしています。

それともに、サプライチェーンの混乱を引き起こさなかった購買部門の貢献度を業績評価指標に組み込むこと、さらには混乱を引き起こさなかったサプライヤーもサプライヤー評価で評価が上がるような制度設計をするといった、評価指標の改善も提言されます。

さらにサプライヤーとの関係では、契約書の不可抗力(Force Majeure)条項の再確認も提言されます。中国企業は新コロナウイルス関連で3,000件以上の不可抗力条項を宣言しましたが、その不可抗力条項の発生条件が契約内容として適切sであるかを、この機会に再確認することを求めています。

そして今回の事態を契機として、ぜひサプライチェーン管理強化に結び付けていくことが肝要としています。