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「水害の規模年々大きく 企業、過去の対策通用せず」、工業団地の4分の1に浸水リスク、未だ復旧せず、日経、日刊工業両紙が警鐘 (2019-10-31)

月末に日本経済新聞と日刊工業新聞の両紙が相次いで、10月水害による供給網断絶について、警鐘を鳴らす記事を出しました。

■日本経済新聞
日経新聞は10月31日に調査結果として、全国の工業団地の4分の1強(27%, 580カ所)に浸水の恐れがあり、供給網の寸断につながりかねないことを報じました。法律で浸水想定区域が指定されるようになったのは2001年以降であり、日本の高度成長期には、河川氾濫災害リスクを意識せず、平たんでまとまった用地が多い河川流域が選ばれることが多かったことが理由と指摘しています。

ただし、河川氾濫災害リスクが想定されているか否かで、状況はだいぶ変わったとのこと。浸水経験がなく、想定せずにラインに浸水したところもあれば、アンリツ郡山事業所のように過去の浸水被害を教訓に生産設備を2階に移していたことで被害が軽妙に済んだところもあるとしています(さらに郡山の新工場は高台に建設)。

60~70年代の大工場では敷地嵩上げなどもできずに、対策をとりながら浸水してしまったところもあるとのことですが、サプライヤーが浸水想定区域にないか、その場合対策がどう行われているかが、購買部門の今後の確認ポイントになると思われます(ただし想定外の事態が発生しています)。

■日刊工業新聞
一方で、日刊工業新聞は、被害に遭った企業の状況を多く伝えています。

・スバル: ティア2の佐藤金属工業(足利市毛野東部工業団地)の浸水により、16日午後から生産停止。25日に再開。当初「部品供給に影響はない」としていたが、一転停止に陥る。
・日立建機: 長野県のサプライヤーの被災で、2工場が23日から停止した一部ライン再開目途は立たず。
・コベルコ建機: 同一サプライヤーから調達しているため、広島の工場を1日ごろから停止。
・豊田自動織機: サプライヤー工場の浸水で、11月上旬まで高浜工場の操業停止。

これらの企業とも、自社は被災を免れたものの、台風通過数日後に生産が止まり、かなり長期に影響が及ぶ見込みが発表されています。

これに対し、調達先の複数化(日立建機)、ティア2以下の把握へとBCP再点検(スバル)などの対策が上がっていますが、今回のような広域水害の場合は容易くはないと思われます。

参考)
台風19号「爪痕」深く、日立建機、2工場再開見通せず/パナソニック、復旧に2カ月ー日刊工業新聞(2019年10月29日)
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00536313

日立建機、台風影響で工場の一部生産停止 「調達先を複数化」ー日刊工業新聞 (2019年10月29日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51501170Y9A021C1XA0000/

スバルの工場停止、BCPの再点検が急務にー日刊工業新聞(2019年10月17日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51096130X11C19A0X12000/