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デロイトのグローバルCPO調査レポートの最新版発表、4つの複雑さ(面倒さ:Complexity)の克服に焦点ーデロイト (2019-10-28)

グローバルCPOレポートを毎年発行してくれるデロイトから、最新の2019年版が発表されました。改良を図って発行時期が遅れていましたが、「複雑さ(面倒さ)の克服 :障害を乗り越え、機会を掴め(Complexity: Overcoming obstacles and seizing opportunities)」というタイトルで発表されました。

調査方法も、従来の単なる「コスト削減と業務効果の業績測定(High Performer手法)」から、予め課題テーマを設定し、それへの対応状況を測定する方式に変更されました。一方で成績上位のグループ(Complxity master)と全体にに区分して結果表示する方式は同様で、調査対象は481人(38か国)と昨年とほぼ同等(微減)を維持しています。

「現在CPOが直面している状況を一言で表すならば、それは複雑さ(Complexity)」だろうという問題提示に始まり、レポートでは4つの複雑さー社外の複雑さ(External complexity)、社内の複雑さ(Internal complexity)、人材の複雑さ(Talent complexity)、デジタル化の複雑さ(Digital complexity)が取り上げられます。また、CPOの2大関心事がコスト削減(70%)とリスク削減(55%)であった調査結果も示されています。

「社外の複雑さ」が主に取り上げるのはサプライチェーンです。気候変動、貿易戦争と関税、景気後退などのリスクに関する回答では、「やや高まった」が42%,「 変わらない」が34%でした。レポートでは非常事態への対応策の事前準備、サプライヤー状況の事前把握、デジタル化による検出の早期化のリスク対策の必要性が提言されますが、回答者の危機感がそれほどでもないのは意外に思えます。

「社内の複雑さ」への対応でまず必要とされるのか、事業部門に貢献するための社内各部門(経理、人事、製造、ITなど)との連携の重要さです。しかし、自部門単独ではそこそこに事業貢献ができているし、戦略的な意思決定プロセスにも相応に関われていると回答されているものの、社内他部門との連携では、製造部門などの一部を除き、どうもうまくいっていない状況が示されています。ゆえに、社内部門との協業状況を見直すとともに、戦略的意思決定への参画不足を埋め、かつデジタル化による連携改善が促されます。

「人材の複雑さ」では、人材能力不足をあげるCPOの比率が3%増え、54%になりました。人材不足はますます進んでいます。強化すべき業務スキル領域では戦略ソーシング/品目管理(68%)と交渉(59%)が多く、ソフトスキルでは事業部門との関係構築・維持が64%とダントツです。またデジタル化に関する教育は、データ可視化(52%)と予測分析(43%)とデータ活用系が重視されています。この状況を受けて、漫然と教育するのではなく事業目標に合わせた育成を行うとともに、電子ツールも利用して採用の網を広げることが提言されています。

最後の「デジタル化の複雑さ」では、ワークフローの改善主体のデジタル化が進んでいるが、どのデジタル機能でも半分が不満足、特にサプライチェーンリスク管理、サプライヤー管理、契約管理の導入がうまくできていないことが示されています。今後2年間で最も有効と考えるのは分析機能で、現状でも分析機能とRPAの導入は比較的進んでいます。またマスターデータを含め、データ品質の低さが課題となっています。このような状況を踏まえて、広範なビジョン持ちつつも粘り強く導入を進めること、事業(ステークホルダー)目標に即した購買デジタル化戦略を作ること、最先端技術を見据えつつも順序だった導入を進めることが提言されています。

デジタル化が全ての側面で必要という考え方が根底にあるため、デジタル化に関する内容が数多く出てきます。また文章量が増えたために、読むになかなかのボリュームがあるレポートになった気もします。

参考)
グローバルCPOサーベイ2019(日本語版)
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/operations/articles/scm/cpo-survey2019.html