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貿易摩擦の影響はどの国に降りかかるかわからない、複数国調達の検討も必要 - Bloomberg (2019-07-22)

7月18日の日本経済新聞の記事「米中対立 長期化を懸念 世界の主要50社超 生産移管」で、中国からの移管が進むことで、調達先の他国移管(工場監査などの手間も発生)や調達網の新規構築が必要になり、購買部門にも負担が生じることを報じていました。この記事では、アップル社がiPhoneのワイヤレスイヤホンの調達先をベトナムに移したことにも触れています。

しかし一方で7月15日には、ブルームバーグが「世界貿易の新たな常態(ニューノーマル)では、安全な港はほとんどない(The new normal of global trade is that there are few safe harbors.)」として、もはやどの国がいつ制裁対象になるかわからず、複数国調達で備えなければならないのではないかとの記事を掲載しました。

記事の対象となったのは、台湾の Eclat Textile社というスポーツウェアなどの縫製メーカー。工場労働力の確保が難しくなった中国での生産を終え、2016年にベトナムに生産移管。

しかし、米国商務省は反ダンピング・相殺関税調査に基づき、台湾や韓国からの鉄鋼製品を迂回輸出している貿易濫用国とベトナムを認定。ベトナムからの鉄鋼に400%超の関税を課す仮決定が7月2日に出されました。これに加えて、ベトナムの労働力の逼迫もあり、生産の5割をベトナムに依存するEclat Textile社は再び生産拠点の移管検討にに迫られているとのこと。

それに対し、Eclat Textile社のHung Cheng-hai会長は、調達先の多様化・分散化が求められている時代になっているのではとし、同社は複数のより小規模な製造ハブを東南アジア各国に設置する計計画と述べています(一方で、中国やベトナムへの生産投資は今後行わない)。

しかし調達先の多様化は、その探索・維持管理ともに購買部門の業務負荷を増大させます。しかし、いつ思い貿易関税賦課のリスクがある現状では、考慮しておくべきとの指摘の記事です。

ちなみに、バイアメリカン政策の1つとして、政府調達品や公共工事の費用に占める鉄鋼製品の米国製比率を95%に引き上げる大統領令に、トランプ大統領が15日に署名しています。

参考)
Nike Supplier Pivots Away From Vietnam After Exiting China-Bloomberg (2019年7月15日)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-07-14/nike-supplier-pivots-away-from-vietnam-after-exiting-china
※リンク先の記事は、上記のブルームバーク記事の日本語訳です。

貿易摩擦「中国生産を移管」50社超 アップルなど-日本経済新聞 (2019年7月18日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47450180X10C19A7MM8000/

米中対立 長期化を懸念 世界の主要50社超 生産移管-日本経済新聞 (2019年7月18日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47183850Q9A710C1SHA100/

米国、アジアからの輸入鉄鋼への追加関税賦課に動く-緊張高める恐れ-ブルームバーグ (2019年7月4日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-07-03/PU34JJ6S972A01