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WATSON Changes Procurement:コグニティブで購買はどう変わるか-IBMの先進事例-IBM Watson Summit2016 (2016-05-26)

IBM Watson Summit2016(東京・高輪)で「コグニティブで購買はどう変わるか」という毛利光博さんによる講演がありました。「Watsonを実際にIBMの業務の中でどう使っているのかの観点からの話をする」ということで、アナリスティクス&コグニティブの側面から、3つのソリューションの説明がありました。

①購入サポート(Watson Buying Assistant)
まず、コグニティブの観点ですが、購入サポートを担当するWatson Buying Assistantが紹介されました。現在は、アマゾン型の購買カタログで様々なキーワードを入れて買う物を探しだすことに労力を使わなければなりません。しかし、Watson Buying Assistantでは、文章テキストや画像をインプットすると、それを解析して、最適な購入品候補を推奨してくれるというもので、キーワード検索行為が無くなったカタログ購買は、90秒程度で購買行為が完結できるようになるとのことです。
探さなくても、推奨してくれる。これにより、問い合わせ窓口、カタログのあり方、発注オペレーションを変えてしまうことになるとの効果が説明されました。

先週、企業倒産法務事例を提示してくれる人工知能弁護士 "AI Ross"が話題になっていましたが、コグニティブコンピューティングの適用により、僅かなインプットでも適切な推奨を行ってくれる機能は、どんどん実現に向かっており、カタログ購買の方式の変化が間もなく起こりそうです。

②サプライヤー管理(Watson Supplier IQ)
次にビッグデータなどで注目されているアナリスティクスからは、2つのソリューションが紹介されました。
最初は、サプライヤー管理のサプライヤー情報のいち現ポータル"Watson Supplier IQ"です。これには、「サプライヤー管理のDashboard」と「動的な情報収集・分析」の2つの機能があります。
サプライヤー管理のDashboard機能では、会社概要(Firmographics)、買い手企業との契約情報、サプライヤーの財務パフォーマンス、買い手企業からの売上(サービス別の売上)、買い手企業からの購入支出(合計および品目別)、買い手企業窓口担当者、サプライヤー担当者などが、一覧で見れるようになっています。
動的な情報収集・分析機能では、検索キーワード(戦略テーマ)に沿った世界中のニュースの自動収集とグルーピング[Strategic Intent]に加えて、各種分析機能(同業サプライヤー間ベンチマーキング、関連性バブルマップ(KPIカテゴリーx規模及び成長など)の動的な分析機能が提供されるとのことです。

"Watson Supplier IQ"は、IBM社内で1,700名のユーザーがあり、従来は半分の情報しか把握できなかったのが、多くの情報が得られるようになり、システムが提供する同一の事実に基いて世界中が会話をできるようになったことが大きいとの効果が述べられました。

ただし導入の前提条件として、情報源となるデータの整備の重要性が合わせて語られました。ソーシング情報(RFx)やサプライヤー評価はもとより、BCP、取引拒否リスト(DPL)、CSRアンケート(S&EMS)、調達オンブズマン記録(USL)などが投入データの例として紹介されていましたが、それが確実に把握できないと、システムが有効に機能できないとの指摘がありました。

③支出管理(Watson Spend IQ)
2つめのアナリスティクスのソリューションは、社内での支出実績の分析を担当する"Watson Spend IQ"です。要求元(事業部)、地域・国、品目の3つを主な集計軸として、Top10サプライヤーレポート、支出予実管理-低減額と低減率、各種達成率レポートなどが紹介されました。ここでは、「青:OK、黄:少し危険、赤:大きな未達」で状況を表示明確に表示する信号機管理での表示が多数用いられていました。

※なお、録音録画禁止のため、画像はありません。

コグニティブコンピューティングを利用した人工知能弁護士 "AI Ross"の記事は以下:
http://www.techinsider.io/the-worlds-first-artificially-intelligent-lawyer-gets-hired-2016-5
http://www.rossintelligence.com/lawyers/