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無意識にふっかけてくる、授かり効果のサプライヤーを正気に立ち返らせる戦術-Harvard Business Review (2016-05-15)

5月13日のHarvard Business reviewのサイトに掲載された論考では、買い手に高値を設定させがちな授かり効果(endowment effect)の心理バイアスで、無意識に高値を設定してしまうサプライヤーを正気に立ち返らせる2つの方策(以下)が提言されています。

1.価格設定の各根拠要素のサプライヤー想定が本当に妥当かに立ち戻らせて、価格設定の再考を迫る
2.価格設定のサプライヤー根拠価格(前例価格など)への対抗事例などを提示し、価格設定の再考を迫る

一方で、買い手側もそれを所有する疑似体験するなどで、不当に安く見積もってしまわないことを、3番めの方策として勧めています。

そしてこの論文は、以下のような文で結ばれています。
"テーブルのどちら側に座っているにせよ、授かり効果が、交渉してる価値(価格)への不同意を引き起こしかねない。その影響を自覚し、それを緩和することは、それぞれが認識する価値の差異を理解し、その差を縮小し、皆がもっと満足できる同意に到る可能性を高めるのである"

記述内容は当たり前のようにも思えますが、人間の無意識の心理傾向を理解し、それへの対応を意識的に行っていくことは有用ではないかと思います。

====(論考の内容サマリー)===
人間は endowment effect(授かり効果)、すなわち、自分が既に所有している物の価値を、所有していない他人よりも高く評価する傾向があると言われています。そのため、取引交渉では売り手は高めの価格を、逆に買い手は低めの価格を設定しがちです。

論文筆者の調査結果では、通常売買取引されるものでは、売り手は買い手よりも、2~3倍も高く価格を心理的に想定する傾向があることが示されています。
(この後、loss aversion(損失回避:手放すことによる損失をとても痛手に思う傾向)などを始めとして、授かり効果の発生理由が様々に論じられますが、実務的には斜め読みで良いように思います)

そして最後に、授かり効果への3つの対応策が前述のように提示されています。